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更新日 2017年6月28日

米 村 研 究 室


光学顕微鏡の技術と画像のページ

固定法、抗体組み合わせの良否の検定

    
     どのように細胞が染まれば正しいのでしょう?最も明るく染まれば正しいのでしょうか?

生化学ならばウエスタンブロットによって分子量の情報も加味してより正確な検定ができますが、蛍光抗体法の場合、蛍光が抗体と抗原との特異的な結合を反映しているのかどうか絶対的な保証はありません。ウエスタンブロットでは1本のバンドのみを強烈に認識する抗体が蛍光抗体の時に同じタンパク質を認識しているという点については、その可能性はある程度高いものの、そうでない可能性もあります。ウエスタンブロットではタンパク質はSDSによるまた別の変性を受けています。SDSはタンパク質の構造を壊しますが、電離しているためタンパク質を可溶化しますので固定剤としては使えません。SDS変性したタンパク質をその抗体が認識しても、アルデヒドによる変性を受けたタンパク質を本当に認識するのか、ひょっとするとアルデヒドが結合したことにより、ウエスタンブロットでは認識しなかった全く別のタンパク質を認識するようになってしまったのではないでしょうか?かつてはそのような可能性を指摘しても、否定するための実験は一般的に困難で、単なる屁理屈と見なされていたと思います。しかし、遺伝情報が手に入り、細胞内に自由にタンパク質を発現させることができるようになり、また、特定の遺伝子をノックダウンすることも可能となっている現在では、より真実に近付くための検定をすることができます。

 検定の簡便な方法は、目的とするタンパク質に何らかのエピトープタグを結合させ、培養細胞に発現させることです。エピトープタグの抗体では発現が十分に確認されるのに、目的とする抗体では、発現している細胞もしていない細胞も変化がないというのでは非常に疑わしいということになります。もしもその細胞に発現させたタグ付きタンパク質が内在性の目的タンパク質の量と比較してもかなり多いことがウエスタンブロットで確認されていたなら、蛍光抗体で光っているものは目的のタンパク質とは関係のないものである可能性が大変強いと言うことになります。また、細胞に発現させたタグ付きタンパク質の局在が明瞭な場合、目的の抗体による染色像と比較して、それらの分布がうまく重ならないのならば、やはりその抗体はその抗原に特異的に結合しているとは言えないことになります。そもそも、抗体によっては目的のタンパク質を強く認識するものの、そのタンパク質が全く発現していなくても、非特異的にある程度細胞を染色することがあります。抗体の濃度を高くしたり、励起光や露光時間、検出感度を上げることでそのようなバックグランドの像を明るい像として記録することは簡単であり、何らかの像が見えれば、特にそれが自分に都合の良い像であれば、それで安心して、正しくない分布を信用してしまうことがありえます。このように目的のタンパク質にタグを付けたものを細胞に発現させて、目的とする抗体の特異性を検定するのは有効な方法です。この時、同じ抗体でも固定法によって特異的に抗原に結合できる場合とできない場合がありますから、一つの抗体については先に述べた幾種類かの固定法を試して、信頼できる分布を示す条件を探すべきです。また、もう一つ有効な検定法は目的とするタンパク質の発現をなくして、染色が全てなくなるかを調べることです。これは従来、目的とするタンパク質のnull mutantの個体が利用できないと不可能で、簡便ではありませんでしたが、最近のRNAiの技術の進歩により、非常に現実的になってきました。実際に、良い抗体、固定法では、RNAiにより目的タンパク質レベルを極端に下げた時、染色がほとんど見られなくなります。一方、細胞内のある部分の染色は全く見られなくなるが、その他の部分は染色が残っている場合があります。ウエスタンで目的タンパク質が十分に減少していることが確認できているなら、残っている染色は実は非特異的な染色であったということです。

 細胞に目的とするタンパク質とGFP等との融合タンパク質を発現させて、その融合タンパク質の局在を内在性のタンパク質の局在と見なしている研究もありますが、正しい結論が導かれている保証はありません。遺伝学のモデル生物では、融合タンパク質を完全な欠失変異体に導入することで、その変異体の異常が正常に回復するかどうかを調べ、その融合タンパク質が正常に機能できる検定することができます。融合タンパク質が正常な機能を持っていれば、その分布も内在性のものと全く同じであると解釈する場合がありますが、厳密に言えば一部のタンパク質しか正常な分布をしていなくても細胞全体の機能に十分であることが考えられます。また、そのような融合タンパク質の発現は、モデル生物以外では個体レベルでは難しく、例えば、ヒトの組織での分布等は内在性のものを抗体で見るのが最も現実的で正確です




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